有竹和子展 -Aritake Kazuko-

2023年11月11日(土)から11月19日(日)

11:00から18:00(最終日17:00)

胸をつく一瞬の存在
暗闇の中にぼんやりと浮かびあがる赤子を抱く母の姿は、なぜか瞬時に消えていく映画の一コマに見える。
周りに箒で掃いたような白い跡が走るのは天の川か。
私たちのいのちは有限で、抗えぬ宇宙の摂理に流されて、たかだか百年で漆黒の闇 に消えていく運命にある。
悲しいまでの幸せを映し出す一瞬の光景の儚さに、日々の営みのかけがえのなさを思わずにはおれない。
私は20年来一貫して折々の胸の痛みを描く彼女の絵を見てきたが、ここに来て、とてつもなく大きなテーマに辿り着いたようだ。
超絶技巧や癒しの絵がもてはやされる昨今、人間の存在を問うこういう絵こそアートの真髄ではなかろうか。
                                                  画家 八島正明